本論では、19世紀イギリス詩人のジェラード・マンリー・ホプキンズの晩年の作品“No
worst, there is none”の表現方法について分析する。ホプキンズは、20歳の頃イギリス国教
会からカトリックに改宗し、さらにイエズス会に入会した。カトリックとして神への深い
信仰を持っていたホプキンズは、晩年苦悩に満ちた人生を迎えることになる。本論では、そ
の苦悩がこの詩の中でどのように表現されているかを分析する。シェークスピアの『リア
王』からの影響、「心の中の山」という心象風景、音声やリズムを工夫した表現などに特に
注意を払いながら、この詩の特徴を捉えてゆく。最後に、この詩の中の「私」とは誰のこ
とか、について考察する。