本研究は,アメリカ合衆国ミズーリ州の小学校における自閉スペクトラム症(以下,ASD)児に対する社会的コミュニケーション指導実践の現地調査を行った。現地の教育実践から,VB-MAPP,及びピアサポートをどのように活用しながら社会的コミュニケーション指導を展開しているのかを調査し,それらを効果的に活用する上でどのような点を考慮すべきかを導き出すことを目的とした。結果,VB-MAPPの活用では,児童の実態把握と指導目標の決定,既学習挿入手続きとプロンプト方略を活用した個別指導の展開,個別指導で学習した知識・技能を他の環境下(例:遊び場面)で指導する又は使用させる工夫,の3点が導出された。ピアサポートの活用では,ASD児の興味関心を活かした関わり,ピアの受容的態度や共同的働きかけ,ピアとASD児をつなぐ教員のファシリテーション,の3点が見出された。最後に,VB-MAPPは学習目標の共有化と学習内容の組織化を促す1つの方法であり,学びの連続性を志向するためのツールとして,ピアサポートはインクルージョンを実現する1つの方法であり,障害のある子も,障害のない子も共に学ぶための方法として,今後の展開が期待されることを考察した。