大切な人を失った後,喪のプロセスにおいて,しばしば故人が登場する夢をみる。これを
「悲嘆夢」と称する。本論文の目的は以下の3点にある。⑴遺された人はどんな内容の夢を
見るのか⑵喪のプロセスに伴って変化が見出せるのか⑶悲嘆夢の系列で故人との絆は解消さ
れるのか,継続されるのか。分析の対象となった悲嘆夢は32 人分,49 個である。これらの
夢を質的な分析方法で検討した結果,16 種の下位カテゴリーが抽出され,4種の上位カテ
ゴリーにまとめられた。①喪失との直面,②別れのやり直し,③絆の結び直し,④共生の継
続,である。前の2つは「切る機能」が優位な夢であり,後の2つは「結ぶ機能」が優位な
夢である。喪のプロセスにおいて,切る機能と結ぶ機能の間を振り子のように揺れながら,
「結び直すことで切る」という逆説的な過程が進展していくことが明らかになった。