本研究は,社会科の教育内容の中核である見方考え方を育成するための方法について,中
学校社会科公民的分野の内容(1)-イ「現代社会をとらえる見方や考え方」及び高等学校公
民科「現代社会」を事例として具体的に示そうとするものである。平成20年改訂の中学校学
習指導要領において,社会科には一つの大きな変化が見られた。それまで,社会科は個別の
事象や出来事によって内容が構成され,それらの理解を通して公民としての自覚や態度を含
む資質の育成が図られてきていたが,この度の改訂においてはそれらの事象や出来事をとら
えるための見方や考え方が重視され,それが「対立と合意,効率と公正」として具体的に提
示されたのである。従来,見方考え方の重要性が指摘されながらも普及しなかった理由の一
つとして,それが何を意味しており,具体的にどのような概念であるかということが明確で
なかったことが挙げられよう。その意味では,今回,4つの概念が示されたことの意義は大
きい。しかし,それによって従来このような発想での社会科の授業づくりに慣れていない学
校現場を一層混乱させ,見方考え方による授業づくりの普及を妨げてしまうことも予想され
る。本研究では,見方考え方を育てる授業づくりの方法を具体的な単元開発を通して明らか
にしていくとともに,今後克服すべき課題を提示していきたい。