本稿ではまず第一に、本研究課題にかかわる内外の先行研究のレビューを行った。その結果、フランスにおける近年の研究動向(問題関心)として、長期にわたり初等教員養成を独占してきた師範学校制度の完全廃止という現今の教員養成改革の背景となる伝統的師範学校体制の限界をあきらかにしようとする潮流を確認した。本稿もこの問題関心を継承しつつ、さらに歴史的に遡及して1879年師範学校設置法の成立過程に関する考察を行うための基礎作業の一環として1879年1月に議会(下院)に提出された法案とその提案理由報告をとりあげ、それらがその後の議会における法律審議の争点を生み出す端緒となったことをあきらかにした。